心が穏やかになるバディミステリ【アストリッドとラファエル シーズン4】

このシリーズドラマについて記事を書きたいと思いつつ、以前少し触れたきりで1年半が経過してしまった。

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そして現在シーズン4がNHKで放送されている。

1シリーズが8話しかないせいもあるが、ドラマの世界は自分の現実よりも変化と展開のスピードが速いようだ。

シーズン2放送の頃は多忙すぎてちゃんと観ることができなかった。

シーズン3と4は毎回録画をして鑑賞している。

オンタイムでは相方も一緒なので「日本語吹き替え」なのだが、日曜日の夜23時半を過ぎると週末の乗馬の疲れが出てうつらうつらしていて、佳境のあたりをほとんど記憶していない。

改めて、ウィークデイの空き時間に録画をフランス語オリジナル音声で観る。

「日本語字幕」を付けていないとよくわからないのが、パリ警視庁監察医フルニエ氏とアストリッドの「法医学」についての会話だ。

もっとも日本語でも「萎縮性血管〜」みたいな単語は、うっすらと意味を推測しているにすぎないレベルの理解しかできないのだが。

アストリッドの喋り方は自閉症ということで、辞書を早口で読み上げているような、かなり特徴がある喋り方だ。

抑揚だけでなく例えば「cependant しかしながら」を好んで使う(書き言葉っぽい)話し方をする。

見始めた頃はフルニエ先生の台詞と同じくらい聞き取りづらかったが、次第に慣れてくると逆に聞き取り易くなり、さらに不思議に心地よく感じるようになった。

 

勇敢で懐が広く、ちょっとがさつなラファエル。

神経質で繊細で、マイルールが大事なアストリッド。

「どちらのキャラが自分に近いか?」

それを考えるのもまた楽しい。

がさつな面が表に出ることはままあるけれど、根本的には自分はアストリッドに近いと思う。

このタイプの人がフランスのような国で生きていくことはかなり大変だと思う。

・他人との距離が大事。(最強バディのラファエルとは今も「Vous(敬称の2人称)」で話す)

・整然としていることが大事で、騒音や他人とのコミュニケーションは大の苦手。

どう考えてもフランスではなくて「日本向き」だと思う。

だからアストリッドの「恋人」は日本人(テツオ・タナカ)でしかありえないのだ。

このテツオ役の俳優、齊藤研吾氏のフランス語が日本訛りでかつ非常に綺麗で、すごくいい。

「理想化された日本人」というイメージで、このような感覚がフランスでもてはやされているというのが、昨今の日本ブームを反映していておもしろい。

昔フランス映画が尖っていた時代、日本人が崇拝していた頃の監督や作品と、最近のフランス映画の傾向はかなり違っている。

むしろ日本映画(に限らずアニメなども含む)の「間」とか「曖昧さ」「静けさ」を倣っているのかと感じるものが多い気がする。

ドラマ全体としても、アストリッドとテツオのカップルのような繊細な美しさに満ちている。

バランス感覚に優れたドラマだなあ、と毎回感動して、穏やかな気持ちになれる。

日曜の深夜に放送するのにちょうど良い上質なドラマだ。(自分は眠くなってしまうのだがそれもまた良し。)

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