鈴木エイト氏の新刊は(サイコ)ホラーミステリ

★この記事には政治的意図や主張は一切含みません。ご了承の上お読みください。

前にもちょっと書いたのだが、2020年の始めコロナ禍が始まる直前に海外渡航の計画があった。

主にフランスイタリアを訪れる予定だった。

予定を組み始めたのは2019年11月ごろだった。

その頃、所用で頻繁に虎ノ門界隈に出入りしていたのだが、妙な風邪にかかった。

めったに風邪をひかないので「不思議」だったが、感染源と思われるオフィスにいた人間もその「妙な風邪」に次々と感染していたらしい。

虎ノ門界隈でになっていたあの「風邪」が何だったのか、今となっては分からない。

それから、年末から年明けにかけて何となくフランスに行くのが心理的に重荷に感じてきた。

その頃フランス国内で「中国人が次々と襲撃された」という報道に何かひっかかるものがあった。

しばらくすると新型コロナの感染拡大が欧州でも始まった。

当初、ヨーロッパ人には「中国人が罹る感染症というような誤解があった。

そのため、イタリアの有名音楽大学 C 音楽院は「アジア人学生だけ個人レッスンが休講」という措置を取って物議になった。

当時の渡欧計画では、まさにこの C 音楽院と所縁のある人と会う予定だったので驚いたものだが、渡航不可のためキャンセルになった。

こうした時の何かザワザワした「イヤな感じ」はよく経験する。

2015年にフランスでシャルリー・エブド襲撃事件というのが起きるしばらく前、フランス国内で「複数の場所でトラが目撃された」という妙な報道があった。

きっと「大きな猫」か何かを見間違えたに違いないのだが、不気味な印象を受けたのを覚えていて、襲撃事件の時、真っ先に奇妙な「トラ」のデマのことを思い出した。

 

そんな自分は「都市伝説」というジャンルがわりと好きだ。

それで家族や友人には生暖かい反応をされながらもテレ東系の『やりすぎ都市伝説』は見逃さないようにしている。

今年4月の放送回の中に、震撼する話があった。

この番組の見どころは、何と言っても Mr. 都市伝説 関暁夫氏のコーナーだろう。

でも、その回で印象的だったのはMr. 都市伝説ではなくて、あばれる君担当の「あばれる都市伝説」のほうだった。

それを観ていて、久しぶりにあの重大事件の少し前に起きる「妙な出来事」の時に感じる「ザワザワしたイヤな感じ」がした。

そのコーナーであばれる君が「調査報告」していたのは日韓トンネルについての都市伝説だったからだ。

あの時の「あばれる都市伝説」が現在につながってくるのを思うと、背筋に冷たいものを感じる。

そんなこともあり若干緊張した心理状態の中、鈴木エイト氏の新刊自民党統一教会汚染 追跡3000日』を読んだ。

テレビで鈴木氏が「この問題は深刻ではあるものの、どこかしら『おもしろさ』があるから人々の関心を惹くのではないか」というようなことを仰っていたのが印象的だった。

しかしこの著作を読み切るのには、普段の倍くらいの時間がかかった。

なぜかというと「ザワザワするイヤな感じ」が定期的にゾンビのごとく襲ってくるからだ。

「おもしろい」ってそっち系なのか?と思った。

時折、呼吸困難になりかかるし(お食事中の方ごめんなさい)嘔吐感さえこみあげてくる。

この心理状態は、超一級のホラー映画を観ている時のそれに似ている。

しかし、鈴木エイト氏の真骨頂だと思ったのは、このノンフィクションに「ミステリ」のような仕込みをしている点だ。

最初の方(P.18)あたりで、筆者はこの問題を紐解くうえで重要なある「時期(いつ)」についての謎を提示している。

いわゆる「伏線」というやつだ。

そして、この「いつ」に当てたによって同時に「ある人物」が浮かび上がる。

「いったい誰よ?」と思う。

でも、時々不意打ちで襲ってくる「ゾンビ」みたいな「ワード」「フレーズ」に心抉られながら前に進むしかない。

でも伏線以外の登場人物たちは、おかしな「記念写真」付きでちょっとコミカルに描かれている。

この辺りは「ゾンビ」物といっても映画カメラを止めるな!風味なので、少し息抜きできる。

途中で何度も崖から突き落とされるような感覚脱力感を乗り越えて、読了。

さて冒頭に掲げられた「謎」だが、名探偵エイト氏による「解決編」はない。

伏線回収されず?と思いきや、きちんと読めば「ある人物」「誰」なのか分かるように書かれている。

鈴木エイト氏は本文中で長年の取材の成果について、一つの絵「パズルのピース」「網点」に喩えている。

「パズル」といえばやはり「ミステリ!」と思うのが、推理小説ファンだ。

ところがこの著作は「フィクション/ミステリ」じゃなくて「ノンフィクション」だというから「(サイコ)ホラー」だと思う。