コロナ禍になってピアノを習い始めたり昔習っていたのを再開したりという人は多いと思う。
予定がキャンセルになって時間の空白が生まれた体験はほぼ初めてだった。
そんな時ピアノはちょうどいい趣味だと思った。
自分の場合は以前から気が向くとピアノを弾くことはあった。
でも昔ピアノから声楽に習い事が変わって以来、歌うための補助としてピアノに触るのがメインだった。
しかしこの数年で引越しが続いたせいで「声楽」をやる環境ではなくなってしまった。
現在の住居は一応ペアガラスなどで気密性はあるが、防音ではないので近所への音漏れを考えると恥ずかしいからだ。
近隣にバイオリンを弾く人がいるが、だいたい同じ位の音量だとシミュレーションすると「やめとこう」と思う。
唯一、収納庫のような場所なら大丈夫だが、あそこに籠ってまでして歌いたいと思わなくなった。
そんな理由で歌はあきらめて(ヘッドホンで)電子ピアノを練習することになった。
それまで手抜きの「伴奏」程度だったので、まず考えたのが(利き手ではない)左手が動くのかどうかだった。
でも実際にやってみると意外とよく動く。
昔まじめに練習していた頃と比べてもいい感じなのではないかと思う。
これには少し心当たりがある。
テレビで歌手の郷ひろみさんが話していたのがきっかけだった。
「(利き手ではない)左手を使って生活するようになった。今ではこんなこともできる」
郷ひろみさんはそういって、華麗な左手トレーニングの成果を披露していた。
それまでほとんど使えなかったという左手を思いのままに使いこなすとは!
それを見て感銘を受けてしまった。
乗馬の時は左手と左足も右側と同じように使わなければならないので、少しは左側トレーニングになっている気がする。
でも、郷ひろみさんを見て、もっと日常生活の中で左手を使うことにした。
箸や鉛筆を使うのはまだまだだが、調理などではかなり左手が活躍してくれるようになった。
筋力がつくのは確かだと思う。
ピアノを再開してみて、左手が意外と動いた時も「おお、郷ひろみ効果か?」と思った。
左手以外にも郷ひろみさんからインスピレーションを受けたことがある。
郷ひろみさんは数々のヒット曲をとばした歌手で、ダンスもすごい。
私も歌(声楽)を習っていた。
ものすごく久しぶりにバッハとかラモーなどを弾いていて思ったのは「歌を習って良かったかも」ということだ。
昔は「各声部」がしっかりと聞こえるようにと言われても、鍵盤だけやっていても分かりにくい部分があった。
でも声楽曲やオペラを習ったり聴いたりしているうちに、鍵盤曲の場合でも以前よりも「歌」が明確に捉えられるようになった気がする。
やはり音楽の基本は「歌」ではないかと思う。
でも(グールドだけはどうにか慣れたが)鼻歌を歌いながら弾くピアニストはちょっと苦手だ。
郷ひろみさんの「ダンス」については真似できるはずもない。
スポーツジムでちょっとやっていて苦手だったものの楽しかった記憶がある。
「ダンス」ではないが「歌」と「乗馬」には共通点がある。
身体の力みが完全にとれてリラックスした状態でないと上手くいかない点だ。
この効能は今ピアノでも感じる。
子どもの頃弾いていた時は、力んでこわばっていたので肩が凝って仕方なかった。
リラックスに加えて筋力も増加したせいか、今の方が身体に負担がない。