日本語で思考できなくなる
少し前に数日間ずっとフランス語のテキストの作業をしていた。
翻訳ではなかったので、日本語は干渉しなかった。
約5000 ワードで起こしたテキストのアクサン記号をWord のスペルチェックで修正。
忘れないように書いておくと、最初 Word の校正機能が働かず焦ったが、Microsoft Ofiice にログインしてアップデートをしたら大丈夫だった。
フランス語だけの数日間によって、自分の頭の中の日本語が完全に機能しなくなった。
仕事のメールとブログだけはなんとか惰性でやりきった。
でも日本語でものを考えることと、日本語の文を読むことができない。
この現象を自分では「言語間ダウンタイム」を呼んでいる。
ひとつの言語に集中すると、日本語ワールドに戻るのに、集中していた期間と同じくらいの「言語間ダウンタイム」を要する気がする。
自分としてはその間は「人格」も入れ替わっていると思うのだが、その話を人にすると不気味がられる。
仕方なく新宿に買い物に行く
「言語間ダウンタイム」を有効に消化するべく、プロ野球日本シリーズを観戦していた。
しかし「言語」は使わなかったものの、連日想像以上に脳がぐったりするようなすごい展開だった。
そこで久しぶりに買い物でもすることにした。
当初の予定では新宿西口から伊勢丹、できれば世界堂まで回るつもりだった。
地下道を歩いていると、ふと「楽譜」のことを思い出した。
去年身内から「あげるよ」と言われてもらったジャン=フィリップ・ラモーの鍵盤作品集の楽譜がある。
気安くくれた訳はたぶん「運指」がついてない楽譜だったからだと思う。
それを使って1年くらいやっていたが、やはり「運指」が怪しい箇所がある。
楽譜には詳しくないが、楽譜屋に寄ってみようと思い立った。
ハルクに入っていた山野楽器はなくなってしまったようだ。
仕方なくB1を通り抜けようとしたら、イタリアンレストラン「アントニオ」の総菜売り場が目に入った。
そしてなぜか楽譜ではなく総菜を買いこんでしまい、それをぶら下げて先に進むことになってしまった。
世界堂までの果てしない道のり
そこから新宿三丁目に向かって歩き始めると、次に紀伊国屋書店に寄りたくなった。
でもこの書店は各階間の移動がかなり面倒くさく、エレベーターも時間がかかる。
重いイタリアン総菜を最初に買ったことを後悔しはじめた。
紀伊国屋は機を改めることにして先に進んだ。
すると今度はミスターミニットがシューケアグッズのセールをやっている。
気になるものの、ここで荷物を増やすと先に差し支えるのでパス。
ようやく伊勢丹に着いて地下2階から買い物スタート。
ここでインスタグラマーとかインテリア好き御用達の有名ハンドソープを購入する。
この店は押しつけがましいお勧めなどは一切ないので好感が持てるが、いつもサンプル品をくれるという。
その時にあれこれ話が長くなる傾向がある。
ようやく頂くサンプル品が決まり商品とともに受け取った瞬間、自分の中で何かが終了した。
たぶん、だが長いコロナ禍でほぼすべての買い物をネットでしていたせいだと思う。
他人とコミュニケーションをしてモノを買うために極端にエネルギーを消耗してしまったに違いない。
もうこれ以上買い物を続ける気力がなくなってしまった。
その代わりにB1で、新宿伊勢丹の食料品売り場で一番売れているというフィナンシェを買う。
世界堂まで行くなんて無謀な計画をよく思いついたものだと思う。
それもイタリアン総菜なんてお荷物を真っ先に仕入れて...
そしてフィナンシェを買うために20分も並びながら、ふと気づいた。
パソコンをいいかげん買い替えた方がいい...
それなら伊勢丹斜向かいのビックロ(ビックカメラ)に行かないと!
ダメだ、全然買い物ができない。
まずは「買い物リスト」を作成することにしよう。
箇条書きから始めればいい。
頭の中を整理しないと行動がめちゃくちゃになる。
でも世界堂にたどり着ける日はいつになることやら。
でもとりあえず日本語の思考と日本語の人格は戻ってきた気がする。
「言語間ダウンタイム」もようやく終了しそうだし、火曜日からの日本シリーズも楽しみだ。