「平等」から「格差」を実現すれば発音は上達?!
以前の記事に書いたように「強弱(ストレス)アクセント」をもつ英語は「高低(ピッチ)アクセント」の日本語とは大きく異なる音声システムを持っている。
日本語の発音には「強弱」がない。
すべての音節を均等な「強さ」で発音する。
「い ち、に、さ ん...」
均等さを保たないで「強弱」をつけるというのはどういうかんじかというと?
あれだ!
3の倍数と3のつく数字の時にアホになる芸人さん...
「い ち、に、さー ん」
あんなふうに音が飛びあがると、日本語の場合、どうしてもアホになってしまう...
たとえが飛躍しているが、これが「強弱アクセント」のイメージだ。
そして「強弱」をつける上で非常に重要なのがもっとも弱い音だ。
pp(ピアニシモ)がないとff(フォルテシモ)も生まれない。
だから、まず「最弱」の音である「シュワ=/ə/」を攻略すべしと書いた。
前回紹介した"corruption"(腐敗)という単語をもう一度例に挙げる。
/kərʌ́pʃən/
/kə/(カ) と /ʃən/(シュン) は「シュワ」だから「弱い(=力のない)音」の「最弱グループ」
/rʌ́p/ (ウラp)は、アクセント記号が付いているので「最強王者」を表す。
したがって "corruption"の発音の視覚的イメージはこうなる。
"corruption"
「カ(最弱)ウラp(最強)シュン(最弱)」
【ステップ 1】
音読(音声トレーニング)をする時、スクリプトのすべての単語に上の「ʌ́」のようにアクセント記号「′」を付ける!
実際に声に出す時はアクセントが付いた音節だけを強くし、後の音は消えてもいいくらいの「差別意識」を持つ!
シャドーイングがうまくできない原因
最近は英語スクールでも、ネット上の英語学習情報サイトでも「シャドーイング」が推奨されている。
でも実際には「シャドーイングがうまくできない!!」という人が多い。
「舌が回らないんです...」というケースがほとんどだ。
シャドーイングもオーバーラッピングも「早口言葉」ではない。
でも苦手だという日本人の多くは、まるで「早口言葉の猛特訓」をしているかのようだ。
TOEIC 教材を例に出すと、北米式カナダの音声が一番「早口」かもしれない。
「こんなの、絶対無理ですって...」という感想をよく聞く。
なぜそうなってしまうかというと、彼らは「日本語式」の発音と発声をしているからだ。
そしてそれは英語の発音から見ると「燃費が悪い」つまり非効率なのだ。
"environment"(環境)
こういう綴りの長い単語を日本人は「エンヴァイアロンメント」と日本語式に「平等な強さ」で読もうとする。
でも実際の発音はほとんど「ンヴァラムン」だ。
このカタカナの文字数の差を見ても、読み上げ時間に差がつくのはは歴然だ。
効率化にとって重要なのはとにかく「無駄を省く」だ。
/enváiərənmənt/
/vá/ の後ろの母音はすべて「シュワ」であることに注目してほしい。
「やる気のない中学生のごとく」手を抜くのだ!
手を抜けば楽になって先に進めるから、絶対無理だと思ったあのカナダの音声にも付いていく第一歩が踏み出せる。
【ステップ 2】
今まで一生懸命、律儀に発音していた多くの母音から「平等」を奪い「強弱」の実現をめざす!
「弱者(=シュワ)」を差別しまくり、「強者」だけを特別扱いすればナチュラルスピードに追いつくための戦略が見えてくる。
ウィスパリングボイスでの音読
シャドーイングが苦手だと感じる日本人がそれを攻略するための第一歩は上に書いたとおりだ。
でも実際には今までの発音・発声のクセを直すのはなかなか難しい。
何事も、やっていなかったことを「やれ」と言われるよりも、やっていたことを「やるな」と言われる方が難しい気がする...
ひとつひとつの母音をはっきり発音しすぎるクセ、
日本人特有の「声帯を鳴らしすぎ」の修正
という課題がそれに当たる。
(日本人特有と書いたが、イタリア人の英語にも同じ傾向がみられる...)
上に挙げた世界のナベアツの「3の倍数と3のつく数字の時にアホになる」やつの
30番台
が日本人の英語の発音のイメージだ。
ずっと絶叫している30番台...
すべてが「強」で「弱」がない。
また「母音」が強い日本人の英語の発音では、相対的に「子音」が弱い。
今まで「母音」に割り当てていたエネルギーを節約して「子音」に振り分けることで発音は劇的に改善する。
(発音を改善する目的は記事を改めるが、リスニングの精度に関わってくるからでもある。)
「子音」強化にいちばん効果があったのは、私が過去にレッスンしたことがある通算約200人の生徒さんの経験では、
声帯を振動させないささやき声での音読
だった。
この方法だと絶対に声帯を鳴らすことはできないので、「息、呼気」だけが頼りだ。
炭水化物抜きダイエットの時、バナナばかり食べるようなものである...?
...ちょっと違うか...
この時しっかりと子音を丁寧に発音しないと息をしっかり出すことができない。
「1メートルくらい先の相手に聞こえるくらいのささやき声」を目指すと効果的だ。
【ステップ 3】
母音の鳴らしすぎを削減、代わって子音を強化するのにもっとも良い方法は、ささやき声(whispering voice)での音読... ハァハァ...(*´Д`)
声帯をまったく震わせずにハッキリ息の音が聞こえているようになれば、「子音」の存在感がup!
ステップ 1〜 3までを継続的にトレーニングすることによって、「超速」に感じられたネイティブの音声も驚くほどついていけるようになったと、多くの生徒さんが効果を実感していた。
ぜひお試しあれ!