(仮)正しさを探すのはやめておけ

SNSでその女性と出会ったのは、互いに共通するテーマがあったからだった。

私が探していた情報に関しては、それ自体はありふれた問題で、そこらじゅうに転がっているようなものだ。

でも、私はその問題の背後に「政治家」「国家公務員」のどちらか、またはその両方が関わっていると感じていた。

月並みだが、いわゆる「汚い金」が絡んでいる可能性が高い。

なぜそんなことを考えながらSNSを漂っていたかというと、理由はある。

権力者が関わっているとみられる組織の金銭的不正の一部として、

「自分(もしくは自分の情報)が利用されている」

と感じたからだ。

国費を受け取るために提出された書類の片隅に、自分もその一員として名を連ねている可能性が高かった。

「アキラどうする?」と自分に問う。

突拍子もないようなことを書いているが、昔から似たようなことはよくあってWikipedia にも同様の話はいくらでもある。

自分が持っている話だけで有名週刊誌でも扱ってもらえるネタだった。

「でも◯◯砲が出たって、それだけだよ」

と、業界のある人は言った。

 

そんな背景があって、SNSをこまめにチェックしていたある日、彼女から丁寧なあいさつ付きのリプをもらうようになった。

彼女はある組織とのトラブルについて個人的に法的措置を講じており、その結果を待っているという。

SNSを使って発信力を持ちたいという明確な意志が感じられたし、かなり濃いめの絡み方で急激にフォロー&フォロワーを増やしていた。

虚実混じった、ごった煮のような世界だが真実は含まれていることもある。

 

私は自分が探している情報について、破片ほどの呟きを見つけることはできなかった。

SNSからの手を引こうと思った時、彼女からDMが届いた。

たぶん、お互いに「似た匂い」がしたのだと思う。

彼女がDMで伝えてきたことは、だから驚きではなかった。

自分が抱えている問題は表向き一個人の小さな問題だが、その背後には政治家周りの金銭的癒着があるに違いないと考えている。

彼女の話に出てくるのがA省だとすると、私の話のはB省で、そこを経由して巨額の国費を受け取っている法人がある。

自分の話と違うのは、彼女がそこから受けた被害が相当甚大だった点だ。

「この妄想のような話、今まで本気で聞いてくれた人はいませんでした。アキラさんが初めてです。」

彼女はそう言って、自身でこれまでに収集した情報や仮説を私に説明した。

妄想だか仮説ではあるが、筋は通っている。

証拠の有無という点では私の方が有利なものを握っていた。

シナリオは、昨夏に逮捕、起訴された国会議員の汚職に似ていた。

互いに共通するのは、

「真相を究明したい」という欲と「それを世に知らしめたい」という、こっちは復讐めいた欲だったのだろう。

彼女の案件に関わると想定された権力者は業界のラスボスだし、私の案件に関わっていそうだと目星を付けたのもその次くらいに力を持っていそうな人物だった。

いずれも総理大臣経験者だ。