(関西風)桜餅を手に入れるために

同じ名称でも、関西と関東とでかなり違う「食べ物」は多い。

今の季節だと「桜餅」がそれである。

関西風(道明寺)の「おはぎ」のようなタイプの桜餅は、東京ではどこでも売っているわけではない。

ちなみにクレープタイプの関東風(長命寺)の方が「発祥」で、かの徳川吉宗公がからんでいるらしい。

東京の桜の名所である隅田川堤に桜を植えるよう「公園政策」を推進したのが、徳川八代将軍吉宗で、桜葉の有効活用として桜餅が開発されたようだ。

このあたりの話は老舗「とらや」のウェブサイトに書かれている。

https://www.toraya-group.co.jp/corporate/bunko/historical-personage/bunko-historical-personage-041

そんな訳で、元祖の方の桜餅は関東風だが、私は関西風の方になじんでいるため毎年桜の季節になるとどうにか手に入れるために奔走することになる。

近所の和菓子店も関東風だけなので、新宿のデパートで買うしかなさそうだ。

小田急百貨店は現在、改築のため移転縮小しているので、伊勢丹に狙いを絞ることになる。

伊勢丹新宿店のデパ地下で一番人気がある和菓子店は、博多の「鈴懸」だ。

www.suzukake.co.jp

以前から人気店だったが、ここ数年は購入するために長蛇の列に並ばなければならない。

いつも通りかかると「30分待ち」は軒並みで、ひどい時はその倍くらい人が並んでいる。

 

私は行列してモノを買うのが嫌いだ。

もっと若い頃は何でも「効率化」するのにハマっていて、「ライフハック」系の暮らしを追求していた。

だから何十分も並んで何かを買うなんてあり得なかった。

しかし鈴懸の「桜葉餅」は魅力的だ。

ちなみに、鈴懸のこの商品はいわゆる関西風とも違う。

道明寺粉(蒸したもち米を干してひいたもの)から作っているのではなく、おはぎのようにもち米を蒸したものから作っている(と思う)。

だから「おはぎ」「ぼた餅」に近い食感だ。

行列に並ぶのは嫌だったけれども、このまま手をこまねいているうちにもう桜は散り始めている。

このままだと桜餅を食べ損ねてしまう。

伊勢丹の鈴懸の前を通ったある日の夕方、意を決して並んでみた。

25分くらい並んだのだが、何と、自分の2人前の人のところで「桜葉餅」は売り切れてしまったのだ!

仕方なく、苺大福を買って帰ったが、どうにも納得がいかない。

そして数日後、改めて比較的混雑がひどくない平日の午前中に狙いを定め、「20分だけ」鈴懸の行列に参加して、どうにか買うことができた。

 

こんなに苦労してようやく手に入れた「桜餅」。

だがしかし、私は実は甘党ではない。

さらに和菓子がそんなに好きな方ではないのだ!

子ども~若い頃から、茶道には精神的に心惹かれるものがありながらも、どうしても近づきがたかった理由のひとつは、和菓子(上菓子)だった。

「とらや」の羊羹などもおいしいと思うのだが、それでも一口サイズのミニ羊羹ですら一度には平らげられないほどだ。

そんな「非甘党」の自分だが、どうしても食べずにはいられない和菓子が桜の季節の「桜餅」と6月末の「水無月」だ。

桜餅をいただかないと、どうにも春を満喫したという気分になれない。

今年も、苦労して手に入れた桜餅をひとつだけ食べて、馥郁たる香りを愛でつつ、この季節の風情を味わうことができた。

まさに「花より桜餅」状態だが、桜花の方ももうあと少しだけ楽しむことができて良い春になった。