酸っぱいフランス料理と甘い日本料理

フランス料理と砂糖

いつ誰が言っていたのか忘れたが、有名な料理人か美食家だったと思う。

フランス料理には(基本)砂糖は使わない。

対する日本料理はよく砂糖を使う。

だから、フランス人は食事中「糖分が欲しい...」と思ってイライラしている。

そして一番最後に、デセールとしてたっぷり糖分が来る。

日本料理は砂糖を用いたものが初めの方から出される。

こうして少しずつ糖分が補給されるため、食事中イライラせず、落ち着いて楽しめる。

たしかに、フランス料理ではピクルスのような漬物とか、肉の表面をカリっと炙るような時以外に砂糖はあまり使われない気がする。

中世の頃は「甘ったるい料理」が幅を利かせていたようだが、その反動として17世紀ごろから基本「フランス料理」には砂糖は用いないのがスタンダードになったらしい。

フランスは何かと「ルール」が厳しい国で、国語(フランス語)における外来語の管理も公が行っている。

砂糖の使い方にしろ、外来語の管理にしろ、日本は実に自由な国だと思う。

砂糖を使わないフランス料理では食事中の「イライラ」の反動が出るのか、お菓子類はめっぽう甘い。

実際、砂糖の消費量から見ても、フランスは日本を圧倒しているようだ。

フランス料理に限らずだが、(お菓子を含まない)世界の料理には「甘い文化」と「甘くない文化」がある。

私は甘い料理はあまり好きではない。(そして関東地方の味付けは概して甘い。)

 

フランス料理と日本料理の酸味の違い

フランス料理と日本料理を「砂糖」の観点から見た上の話は興味深いが、私にとってもう一つ気になるのは「酸味」だ。

なぜかと言うと、酸っぱい味が大好きだからだ。

「酢」自体にも好みがある。

昔初めてフランスで「ニース風サラダ」を食べた時の鮮烈な酸味は忘れられない。

近年は日本でも酸っぱいドレッシングの料理店は多くなっている。

でもスーパーマーケットで売られているドレッシングの多くは、日本人好みにしているせいか「甘味」が強いものが多い。

胡麻ドレッシングなどそれはそれで美味ではある。

「酢」自体も、日本の酢はまろやかでキツい酸味のものは少ない。

日本料理に「酢の物」は欠かせないが、やはり甘みをきかせていて、鋭い酸味ではない。

 

パンチの効いた「酢」

日本料理が概して酸味が弱いせいか、「酸っぱい」好きにとって満足できる「酢」はあまり多くない。

一般的なスーパーマーケットではパンチの効いた味の濃い酢がなかなか見つからない。

私が好んで使っているのはイタリア産のアップルビネガーだ。

これはデパートでないとあまり取り扱いがない。

はっきりいって、そのまま飲みたくなるほど好きだ。

でも本当に飲むと必ずむせるからやらない。

 

「酸味」「甘味」と料理文化の関わりは絶妙なところがある。

だから「甘いフランス料理」と「酸っぱい日本料理」はまったくイメージができない。

 

「パンチ」に飢えた日本人

砂糖の使用量、酢の効かせ方から見ても日本料理は「まろやか」だ。

これは「辛味」についても言える。

日本料理では「酸味」同様「辛味」も控え目に用いる。

だからそれでは味覚が物足りないという人間は、韓国の唐辛子料理や「酸辣湯(麺)」「トムヤムクン」などに走りがちだ。

唐辛子は南蛮貿易で日本に先に伝わったが、今では朝鮮半島国民食になっている。

日本料理の唐辛子の使い方は「七味」などほのかなものが多い。

「甘味」「辛味」「酸味」すべてにおいて控え目な日本料理だが、パンチがない分「塩分」が多くなる弱点が指摘されている。

初めは薄味に感じても次第に塩辛く感じてくるのは、圧倒的に日本料理だと思う。

和食に限らず、食品添加物としての「塩分」過多の問題はずいぶん昔から言われている。

塩分の摂取過多は世界でも問題になっていて、イギリスの取り組みがすごい。

国民の健康のために政治が主導して食品会社(例えばパンなど)とタッグを組み、消費者が気づかないように、毎年少しずつ含有塩分量を減らしていったらしい。

元来、政治とはそういうことをする機能だが、それができない国では個人で取り組むしかない。

【参考】

coffeedoctors.jp